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札幌高等裁判所 昭和37年(ラ)65号 決定 1962年12月04日

抗告人 山崎サツ子

主文

原審判を取り消す。

抗告人の名を幸子と変更することを許可する。

理由

本件抗告申立の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

一件記録並びに当審における職権調査の結果によれば抗告人は父山崎明、母チヨの四女として昭和九年一月二六日出生し、同年二月一日父母が抗告人を幸子(さちこ)と命名し出生の届け出を抗告人の叔父山崎久雄に委託したのに同人において名を誤つてサツ子として届け出をしたこと、抗告人の父母において抗告人の名を父母の意思に副わずサツ子と届けられていることを抗告人が小学校に入学したとき知つたが、平素抗告人をサッちやんと略称し、抗告人も自己を表彰する名がサツ子であることに不満がなく、小学校を卒えて旧制女学校に入学後級友から故さらにサツ子と揶揄して呼ばれるに及んで抗告人は自己がサツ子と呼ばれることに嫌悪を感じて幸子(さちこ)の名を使用し、新制高等学校を卒業し、幸子の名で岩内営林署職員に採用され職場並びに家庭において自他ともに抗告人の名を幸子(さちこ)と呼ぶことに習性化されておること及び抗告人が近く営林署職員後藤悟と婚姻するに当り、サツ子の名を幸子(さちこ)と変更することの許可を申請することにつき後藤悟の賛同を得て居り、抗告人が現在の名を右の如く変更することにつきその身分上財産上なんら他に影響をもたらす虞れのないことが認められる。従つてかような場合は抗告人が自己の戸籍上の名サツ子を幸子(さちこ)と変更することの許可を求めるにつき正当な事由ある場合に該当するものと認むべきであるから、抗告人の本件名の変更許可申立を却下した原審判は不相当で、本件抗告は理由あるものといわなければならない。

よつて、家事審判規則第一九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 南新一 裁判官 輪湖公寛 裁判官 藤野博雄)

別紙

抗告の理由

一、抗告人の申立にかかる札幌家庭裁判所岩内支部昭和三七年(家)第一一二号名の変更許可申立事件について、同家庭裁判所は、昭和三七年九月六日抗告人に対して、本件申立を却下する審判をし、昭和三七年九月一二日抗告人に通知があつた。

二、右審判の理由は抗告人の提出した本件証拠資料によるも、申立人の現在の名を変更するに付正当な事由があるものとは認められないから、本件申立は理由がなく、却下を免れないとの理由で本件を却下したが、抗告人の提出した証拠資料として、友人からの葉書数枚のみを証拠資料と断定した事は、調査の粗漏を免れず、抗告人が農林事務官として、昭和二八年九月一九日付を以て正式に山崎幸子として辞令書をもらい、今日に及んで居る事実も調査せずに本件を却下したことは、不服であるので、この抗告に及んだ次第である。

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